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「相手が感じたことこそが真実」──子育てや日常から学ぶ、思いやりのコミュニケーション

最近あらためて、「相手が感じたことは、その相手にとっての真実なのだ」という言葉を意識するようになりました。

子どもとの日常や仕事でのやり取りを通して、ついつい自分の感覚や常識を押し付けてしまうことが多いと気づかされるからです。

今回は、具体的な子育てのエピソードや仕事での事例をもとに、「相手の感じ方を尊重すること」の大切さを考えてみたいと思います。

1.「暑い」と言う子どもvs.「寒い」と思う大人

子どもはときどき、信じられないくらい厚着を嫌がったり、夜中に布団をはねのけてしまったりしますよね。

大人からすると、「こんなに寒いのに……」「風邪ひくから上着着なよ」と思うものですが、実際には子どもが“暑い”と感じているなら、それは子どもにとって真実です。

私自身も子どものころ、「布団が暑くて苦しい」「寝るときは半袖がいい」と強く思っていました。

でも大人からすれば、「明け方は冷えるから」「体が冷えたら風邪ひくから」と、何度も布団をかけ直されたものです。

結果として「子どもがイヤがる=わがまま」扱いになってしまうことも。

確かに、明け方になれば冷えるかもしれませんし、本当に風邪をひいてしまうリスクはゼロではありません。

しかし、当の子どもが暑いと感じている事実は、そのときの子どもにとって100%リアルな感覚です。

「大人の常識」や「一般的なデータ」に当てはめてしまうと、その子どものリアルな感覚が否定されてしまうかもしれません。

2.仕事でも同じ──「簡単」と感じる人、「難しい」と感じる人

子どもとのやり取りだけでなく、仕事の場面でも同じことが起こります。

たとえば私が「これは簡単な作業だろう」と思うものを、部下や同僚が「難しい……」と感じることがあります。

逆に、私が「とても難しい!」と思う仕事を、誰かはあっさりとやってのけることもあるでしょう。

いくら私が「5分で終わる作業だよ」とか「誰でもできるよ」と言っても、相手が「難しい」「苦手だ」と感じているなら、それが相手の真実です。

「そんなの簡単だろう?」と断言してしまうと、相手の感覚を否定してしまい、余計にストレスを与えてしまうかもしれません。

3.「飛行機は世界一安全」と言われても怖いものは怖い

よく言われる「飛行機は世界一安全な乗り物」という話。

実際、統計的には自動車のほうが事故率が高く、飛行機事故に遭遇する確率はかなり低いようです。

しかし、どれだけ数字の上で証明されても、「飛行機が怖い」と思う人はやっぱり怖いのです。

• 「統計的には問題ないから平気だよ」

• 「車のほうが危険なんだよ」

そんなふうにデータを並べ立てられても、「怖さ」の感情が消えるわけではありません。

本人にとっては、怖いものはやっぱり怖い。

ここでも「相手が感じていることこそが、その人にとっての真実」というシンプルな事実を思い出します。

4.データや論理よりも先に「相手の感覚」がある

私たちが誰かの意見や行動を見たとき、「なぜそんなふうに感じるんだろう?」と不思議に思う瞬間があると思います。

でも、どれだけ理詰めで否定してみても、その人にとっては「自分の感覚が正解」。

いったんは、その感覚を尊重してあげることが、コミュニケーションの第一歩ではないでしょうか。

もちろん、明け方に布団をかけないと子どもが本当に風邪をひいてしまうこともあるかもしれません。

飛行機だって絶対に事故がないわけではありません。

ただ、相手が「寒くない」「怖い」と感じているなら、その思いをまずは受け止めるところから始めるべきなのだと思います。

5.相手の真実を否定しない──コミュニケーションの基本

「相手が感じたことは、相手にとっての真実」である。

このシンプルな言葉を、私も日々の子育てや仕事の中であらためて意識するようにしています。

• 子どもが「暑い」と言うなら、まずは「そうか、暑いんだね」と受け止める。

• 部下が「これは難しい」と言うなら、「そう感じるんだね、じゃあどのへんが難しいか一緒に考えてみよう」と声をかける。

• 友人が「飛行機が怖い」と言うなら、「怖いと思うのは当たり前だよね」と認める。

相手の感覚を否定されないと、人は安心して「自分の気持ち」を話せるようになります。

そこから初めて、論理やデータを共有したり、対策を考えたりする会話が生まれていくのだと思います。

6.まとめ:まずは受け止めることから始めよう

日常生活や子育て、仕事の現場でも、私たちはつい自分の基準で相手を判断してしまいます。

しかし、自分が「寒い」と感じているからといって、相手も同じように感じているとは限りません。

相手にとっての真実を否定せず、「そう感じるのは当然だよね」と受け止める姿勢こそが、より良いコミュニケーションの土台になるはずです。

データやロジックは、あとから補足するために活用すればいい。

まずは「相手はこう感じている」という事実を受け止める。

それが、私自身が「相手が感じたことを真実として尊重する」ために、日々心がけているポイントです。

自分とは違う感覚に出会ったときこそ、一歩立ち止まって「この人は今こう感じているんだな」と理解を深めるチャンスかもしれません。

そんな小さな積み重ねが、子どもとの信頼関係や職場での円滑なコミュニケーションにつながっていくのだと、改めて感じています。